チームクニミツ

TEAM KUNIMITSUのデザインは「新しく、強く、バランスよく」。小島一浩監督兼デザイナーが伝えたい“手を抜かない”大切さ 【後編】

2024.04.30

 TEAM KUNIMITSUの監督としてチームを率いる一方、チームのデザイナーとして活躍する小島一浩氏にレーシングチームのデザインを聞く今回の企画。マシンデザインの前編に続き、後編ではマシンデザイン以外のデザインワークについての話を聞いた。

 

 

 小島氏はTEAM KUNIMITSUのデザイナーとして、前編で触れたマシンデザインに加え、ドライバーのレーシングスーツやメカニックスーツ、スタッフや販売用のウェア類やグッズ全般、さらにピットのパーテーションや看板などサーキットで目に付くほぼすべてのTEAM KUNIMITSUのアイテムは小島氏によるものだ。

 小島氏は、デザイナーとして「すべての物において、できるだけ新しく、強く、バランスよく見せるデザインを、自分のフィルターを通して作っていきたい」という想いを続けているとのこと。

レーシングスーツや耐火スーツなどのデザインで意識していることを小島氏に聞くと、マシンと同様にウェア類でも様々な局面において「強く・バランスよく」見えるようなデザインが大切。もちろん全てに関して、カッコよく作ることも大事だか、スポンサーロゴがしっかりと綺麗に見えることは大前提。デザイン性も含めてバランスよく見えないといけない。そこはクルマのデザインと一緒だと述べていた。

 

 TEAM KUNIMITSUといえば、チームグッズは毎シーズン完売商品も多く、ファンの人たちの楽しみの一つともなっている。そのグッズ一つ一つも小島氏が監修やデザインを手掛けている。

TEAM KUNIMITSUのドライバーである牧野任祐選手は、ドライバー随一のおしゃれ好きとして知られるだけに「自分のキャップだけこの型で作ってください」とリクエストがきたこともあると小島氏が明かしてくれた。実際、牧野選手から言われたことがきっかけとなり、グッズにバゲットハットが追加されたというエピソードがある。

 また小島氏は、専門学校桑沢デザイン研究所のドレスデザイン研究科卒業という経歴を活かし、デザインそのものは担当していないが、毎シーズンのレースアンバサダーのコスチュームについて、コンセプトを考案し、一連のディレクションを行う、近年のコスチュームは国内ブランドで修行後、独立した当時の学校の同級生達と製作を行っている。

 

 ここまで、自身の経験をもとにTEAM KUNIMITSUのデザインについて語ってくれた小島氏。自身が持つデザインへの考え方について、商業デザイナーという観点で以下のように語る。

「私は画家やアーティストではありません。いちばんはクライアントやファンの皆様が良いと思ってくれるものを作ることが優先されます。時代のトレンドを含め、そのときに一番カッコいいと思われるデザインを全力で考え、それを生み出すことが僕の仕事です。デザインという産みの苦しみはありますけど、最後まで諦めず手を抜くことは絶対にしないようにしています。」

ただ、レースもデザインも共通して難しいところは、様々なデータや知識、過去の経験値などを含め、机上では『完璧に仕上がった』ものでも、いざ実際にことを進めて行くと何か違和感を受けてしまうことがある。小島氏はそんなときも自分の感覚を信じて対処したり、ギリギリまで考え抜く時間を重ねていくことが大事だと強い決意を込めて話を締めくくった。

 

 最後にTEAM KUNIMITSUの監督とデザイナー、同じチーム内でふたつの顔を持つ小島氏。最後に、4月に新社会人になった若い人もしくはデザイン関係の仕事を目指す人にとって、必要なことやアドバイスを貰った。

 「アドバイスというよりは・・・自分が今も、ものづくりで大切だと思っている事を話すと、日常生活で目に入ってくるののでいいな、かっこいいなって思うビジュアルを大切にしています。瞬時の感覚の中で、それがどうしてそう思うのかを改めて考えるようなアンテナをいつも張り巡らすことが、物を作り出すイメージ作りには役立っています。その感覚をいつも研ぎ澄ましていくことが必要ですね。そうやって作られていくセンスを信じて取り組むことが大事だと思います。プロなら当たり前のことなんですけど、限られた時間をどれだけ諦めずに手を抜かずに真剣に向き合えるかは、自分次第でいくらでも何とかすることができる。何事も考え抜くことにより、自分自身のコンセプト(意志)がどんどんと明確になってきます。

『またあの人と一緒にやりたい』『次回もあの人に任せたい』と思ってもらえるような仕事ができればいいかなと」

「そのような日を迎えるために若い時から自分を信じて全力で走り抜き、どんなことでも挑んでいくという姿勢が必要なんじゃないかなと思います」

 前編/後編と2回に分けてお送りしたTEAM KUNIMITSU小島氏のデザイン論。ファンなら知っていた情報があったかもしれないが、小島氏はこれまで自身が手掛けたデザインやその考えを、チームスタッフを含めて公にしていなかった。今回の企画で小島氏とTEAM KUNIMITSUの新たな一面を感じ取っていただければ幸いだ。

 

■Profile:小島一浩(こじま かずひろ/株式会社チームクニミツ代表取締役社長)

専門学校桑沢デザイン研究所を卒業後、1996年にTEAM KUNIMITSU加入。マネージャー業と並行して車両やユニフォームなどのアートワークの総責任者として多くの作品を手掛ける。2010年監督に就任し、2018年・2020年にスーパーGT GT500クラスシリーズチャンピオンへと導く。高橋国光さん逝去後もチームを率い、2024年も監督としてスーパーGT GT500クラスで戦う。