11月1、2日に栃木・モビリティリゾートもてぎにおいて開催されたSUPER GT第8戦「MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL」に参戦したNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT。予選7位から挑んだ決勝レースでは、チャンピオン獲得を信じてタイヤ無交換を敢行。惜しくも逆転タイトルは果たせなかったが、3位でフィニッシュし、シリーズランキング2位を獲得している。

秋が進むなか、早朝は厳しい冷え込みになったもてぎだが、時間の経過とともにぐんぐんと気温が上昇。ただ、前日のような秋日和とは言い難く、サーキット周辺は終日薄い雲に覆われる天気となった。結果として、気温は19〜20度、路面温度も23〜25度で推移した。
決勝日は3万2千人ものファンがもてぎに来場。シーズンの締めくくりの戦いを見届けようと多くの人々で賑わいを見せた。そんななか、ピットウォークのあとには、ホンダが来シーズンから投入を明らかにしている「ホンダHRCプレリュードGT」のデモランが午前10時15分から行なわれた。これから本格的に開発が始まるこの車両だが、栄えあるデモランを務めたのは牧野選手。ホンダ関係者はもちろん、多くの報道陣、そしてスタンドのファンの前でステアリングを握り、コースを2周。「ホンダのDNAでもあるコーナリングマシンを極めていると思う」とインプレッションし、来シーズン以降の活躍に期待を寄せた。


決戦直前の気温は20度、路面温度は22度。依然として薄曇りの天気のなか、午後1時に栃木県警の白バイとパトカーによるパレードラップがスタート。その後フォーメーションラップが行なわれ、いよいよ300kmレースの幕が上がる。
No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTに収まったのは、山本選手。各車装着するタイヤの特性の違いもあるが、それ以上に果敢な走りでオープニングラップからポジションアップを決めて、5位でメインストレートに戻ってくる。その後もペース良く走る山本選手は、前方車両に追随。逆転の好機を狙って周回を重ねた。
前方を行く23号車 Zに対して一時は2秒近く差があったが、レース3分の1を終了する頃には0.5秒を切るまでに。21周目には逆転を決めて4位へと浮上した。そんななか、翌22周終了時からルーティンのピットインが始まり、上位争い中の車両が1台、また1台とピットへと戻って作業を行なう。No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTは24周終わりでピットに飛び込み、山本選手が牧野選手へとステアリングを委ねた。ピットで待ち構えたメカニックたちは給油作業を済ませる一方、タイヤには手を付けずに牧野選手をコースへと送り出す。実のところ、タイトル奪取を狙うためにチームはタイヤ無交換の戦いを敢行。極めてタフな環境に挑み、逆転優勝、逆転タイトルを目指したという訳だ。


ひと足先にコースに復帰していたランキングトップの1号車 Supraがピットで要した時間は36.7秒。一方、No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTは25.4秒。原則、コース上では縮めることのできない大きな10秒超の差をピット作業で一気に縮めた結果、牧野選手はピット作業を終えたクルマのなかでトップ復帰に成功。序盤からトップを走っていた1号車の前に出てレースを再開することになった。
しかし、新しいタイヤを装着した1号車がペースアップしはじめると、2台の差は急激に縮まっていく。牧野選手も懸命に応戦するが猛攻を阻止できず。28周目の90度コーナーで背後につけられると、29周目の3コーナーのブレーキングで先行を許すことに。さらには後続の12号車 Zも1号車に続いた。このまま実質3番手キープをしようと奮闘する牧野選手だったが、やはりユーズドタイヤでのペースアップは難しく、33周目には23号車 Zにも逆転され、実質4番手になる。
レースは、37周終わりで全車ピットインを終えると、牧野選手は改めて4番手からチェッカーに向けてクルマのマネージメントに尽力。一方、前方では激しいトップ争いが展開されており、まだどんなドラマが待ち受けているかもわからない。トップ3とは少し差は開いてしまったが、牧野選手は後方から少しずつ差を詰めてきた39号車 Supraの存在を気にしつつ、最後の最後まで前を見て周回を重ねていった。
55周目にはGT500クラス同士の車両接触が発生。コース上に散乱したパーツを回収するためにFCY(フルコースイエロー)が導入される。ところがわずか1分ほどで解除となり、惜しくも追い風に換えることはできなかった。そして迎えた62周のチェッカー。4位で戦いを終えることになったが、レース後の再車検において2位の車両が不合格に。これを受け、No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTは3位を手にしている。また、シリーズランキングでは2年連続の2位となった。
海外戦の復活やシーズン中盤のスプリントレースなど、SUPER GTとして変化ある1年だった一方、No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTとしては、2位となった第2戦富士以降、強さと速さを存分に発揮できず苦しい展開が続いた。そのなかでも常に策を講じ、結果を追求することで第7戦オートポリスでは待望のシーズン初優勝。タイトル獲得に向けても可能性を繋いだ。そして今回のもてぎでは勝利を目指し、タイヤ無交換を敢行。チーム全員が心をひとつにして最後の最後まで諦めることなく、戦いに挑んだ。惜しくもタイトル獲得は果たせなかったが、ホンダHRCプレリュードGTでの戦いになる2026年は、新車でのシリーズチャンピオン獲得を掲げ、より一層精進してチームクニミツらしい戦いを披露したい。



おかげさまで最終戦を3位で終えることができました。また、シリーズランキングも2位を獲ることができました。チームとしては、昨シーズンに続いてなんとか最低限の結果を残すことができたのではないかと思っています。一年間、応援いただきありがとうございました。
もてぎは追い抜きがそんなに簡単ではないので、スタートが勝負だと思っていました。周りのチームが硬めのタイヤを選んでいるのはわかっていたので、こちらもタイヤの温めをかなり頑張りました。オープニングラップで2台を抜いて、そのあとは23号車の前にも出ることができました。自分のスティントのなかでやるべきことはやれたかと思います。
今回はチームの戦略として、とにかく1号車の前に出ることだけを考えていました。タイヤ無交換も作戦のひとつとして視野にも入っていました。今回はタイヤのマネージメントと燃料セーブをやりましたが、無交換に関しては、後半は厳しくなるだろうと自分が走っているときから想像できました。ただ、1号車の前に出たい……そういう思いだけでした。
結果論だけで言うと、後半、1号車はペースが上がっていなかったので、タイヤ交換をしていればトップ争いのなかに入れたと思うし、自力で1号車の前にも出られた可能性もあったと思いますが、それは結果論ですね。作戦に関しては後悔がないかといえば嘘になりますが本当に1位しか見てなかったです。悔しい思いはあるし、チャンピオンは獲れませんでしたが、やりきった最終戦、1年間だったと思います。
(今季でラストとなる)シビックでは通算2勝となりました。最後は1号車を追いかけてポイント差を詰めるところまでホンダ/HRCの開発メンバーが注力してくれて性能を上げてくれたのでここまでこれました。この勢いを次のプレリュードに注ぎ込んで、必ずチャンピオンを倒したいと思います。
優勝するために敢えてタイヤ無交換をやりました。レースでの内容は「タラレバ」になるのでなんとも言えないのですね。無交換になるとかなり厳しくなるのは事前にわかっていたので、なんとかマネージメントしよう、というよりもとにかく頑張ってコースに留まろうという感じでした。
ピット作業では給油量も削っていたので、後半スティントでの燃費もそんなに余裕があったわけではありません。そういうことも考えて走っていたので、やることはいろいろ多かったです。ポジションも守り切れたのか切れなかったのか、正直よくわかりません。でも繰り上げながら3位で終われたことは良かったです。
来シーズンはクルマも新しく変わるので、そちらに向けてしっかりと準備していいレースができたらいいなと思っています。