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ROUND -8 2018 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI GT 250km RACE GRAND FINAL
序章
 11月10、11日、栃木・ツインリンクもてぎにおいてSUPER GTシリーズ第8戦「MOTEGI GT 250KM RACE」が開催され、チームクニミツのNo.100 RAYBRIG NSX-GTは予選2番手、フロントロウから最終決戦に挑んだ。

 山本尚貴、ジェンソン・バトン両選手は、それぞれ緊迫した攻防戦において好走。
白熱の一戦を3位でフィニッシュした。結果、両選手は2018年のドライバーズチャンピオンに輝き、併せてNo.100 TEAM KUNIMITSUがチームチャンピオンも獲得。最高の形で初戴冠を実現させている。

 例年よりも暖かな天候となったもてぎ戦。
土曜の朝8時50分に始まった公式練習は、気温17度、路面温度19度で幕を開けた。路気温はGT300クラスとの混走を経て、各クラス専有走行に至るまでの1時間45分の間にじわりと上昇。最後は気温21度、路面温度29度を記録する中、都度コンディションに合わせてクルマ作りの作業が進められることになった。

 また、走りはじめの段階では前夜の雨が残っており、しばらくウエットタイヤでの走行を続けたが、チームでは午後からの予選に向けて順調にメニューを消化。結果、セッション終盤のGT500クラス専有走行でアタックシミュレーションを担当したバトン選手が1分37秒018のチームベストをマーク。2番手のタイムで走行を終えた。


予選:
 GT300クラスのQ1予選を経て、GT500クラスのノックアウト予選は午後2時20分に開始。
まずQ1のアタッカーをバトン選手が担当した。気温22度、路面温度24度の中、アタックのタイミングを見計らって大半の車両がピット前で待機。No.100 RAYBRIG NSX-GTもライバルの様子を伺いつつ、セッション残り時間8分でコースへと向かった。
アウトラップでは、ペースの上がらない車両が目前にいたことから、バトン選手は途中で大幅に車速を落として間合いを確保。改めてアタックに向けてアプローチする。そして計測2周目に刻んだアタックラップは、1分36秒344。これはもてぎのコースレコード(1'36.316)に迫る好タイムで、見事トップ通過を果たした。

 続くQ2は午後3時3分にスタート。気温20度、路面温度25度、与えられた時間は10分。だが大半の車両がスタートからおよそ3分後にピットを離れ、今シーズン最後のアタックを開始する。
山本尚貴選手は各セクタータイムで全体ベスト、あるいは自己ベストを刻む力走。コースレコード更新となる1分35秒739のタイムを刻んだ。だが、ひと足早く1分35秒550をマークしたNSX-GTの8号車にはわずか0.189秒及ばず、2番手に。タイトル争いを考慮すれば、直接ライバル関係にある1号車が6番手に留まったため、フロントロウからのスタートは願ってもないものではあったが、同メーカーの一台に先行されたという悔しさが残る複雑な結果でもあった。

 今回、Q1でトップタイムをマークしたバトン選手。「いいアタックが出来たと思うし、ドライブするのが本当に楽しかった。ちょっと跳ねる感じではあったけれど、クルマ自体にスピードがありました」と満面の笑顔を見せた。「チャンピオン争いをする中で予選はとても重要だったので、ものすごいプレッシャーを感じていました。最終的には2位スタートですが、この位置からスタートが切れるという結果が大事だと思うので、明日はタフな戦いになるでしょうがいい走りをしたいです」と最終決戦に向けて自信を覗かせた。

 一方の山本尚貴選手は、「アタックで特別大きなミスがあったわけでもありません。ただ8号車に対してちょっと力が足りなかったという感じです」と予選を振り返った。「もちろんポールポジションを獲りたかったので、悔しいというのが本音です。でもそこばかりを見過ぎると、本来目指すべきところを見失ってしまいます。この悔しさを喜びに変えるべく、明日はなんとしても8号車を抜いて、一番でゴールしてタイトルを獲りたいです」と初タイトル獲得に向けての意欲を言葉に変えた。


決勝
 決勝日を迎えたツインリンクもてぎ。早朝こそやや冷え込んだが、やさしく降り注ぐ深秋の日差しに恵まれ、次第に気温が上昇。予選日同様、この日も穏やかな好天となった。決戦を前にサーキット内では、タイトル争いを繰り広げるドライバーたちのトークショーやピットウォークなどファンサービスが行われ、山本、バトン両選手も参加。秘めたる闘志を胸に、午後からの戦いに備えた。

 気温24度、路面温度30度と絶好のレースコンディションになった決勝レース。
午後1時30分、53周の戦いの幕が切って落とされた。No.100 RAYBRIG NSX-GTのスタートドライバーを務めたのは、山本尚貴選手。ポジションキープでオープニングラップを終え、その後も8号車に追随して逆転のチャンスを伺ったが、周回を重ねるごとに少しずつ2台の間にはギャップが生まれてしまう。

 一方、タイトル争いのライバル、1号車は5番手を走行。チームでは、8号車よりも1号車の動きを警戒しながら戦いを進めることになった。
そんな中、8号車が18周終わりという早いタイミングでルーティンワークを行う。
これでトップに立ったNo.100 RAYBRIG NSX-GTは後方との差を出来うる限り広げるべく、懸命の走りに集中する。
というのも、1号車の戦略に、タイヤ無交換が選択肢としてあるのではないかという懸念材料があったことから、チームではその対策として1号車とのギャップを10秒以上確保する必要があると想定。これにより、ピットインのタイミングを見極めるのが厳しい状況となった。

 だが、山本尚貴選手はそんなシビアなコンディションの中でも果敢に攻め続け、およそ9.5秒の差を確保する。
これを受け、チームでは29周終わりでのピットインを決断。すると1号車も同じタイミングでピットに戻り、2台はピットワーク作業においても競ることに。結果、37.5秒で作業を済ませたNo.100 RAYBRIG NSX-GTのスタッフは、1号車を従える形でジェンソン・バトン選手をコースに送り出すことに成功した。

 GT500クラスの全車がルーティンを終えると、No.100 RAYBRIG NSX-GTは3位で周回を継続。
この時点で、4番手につける1号車との差は7秒ほど。トラフィックが深刻なもてぎのコースでは、タイミングが悪いとその差がわずかの間に削り取られてしまうが、ジェンソン・バトン選手は周回遅れの車両を見事に処理し、攻めの走りを続けた。
終盤、1号車との差がじわりじわりと縮まり、1秒を切る緊迫の状況になってもつねに冷静な判断を下し、見事な応戦で1号車の猛攻をシャットアウトしてみせた。
結果、3位でチェッカーを受け、チャンピオンタイトル獲得に成功。山本尚貴、ジェンソン・バトン両選手が高橋国光総監督にチーム初となるSUPER GTチャンピオンをプレゼントし、今シーズンの全レースを終えることになった。




高橋国光総監督
 ここまで実に長い道のりでした。
こうやっていい結果が出ると、逆にこれまで本当にみなさんにご心配をおかけしてきたのだなという思いもありますね。
このSUPER GTでチャンピオンになるには、まずいいドライバーが必要です。
メンテナンスを担当するATJの皆さん、伊与木チーフエンジニア、チームクニミツのスタッフも含めたみんなの力も必要でした。
僕はただ居るだけなので。みんなのおかげでこの結果を残すことができたと思います。今日のすばらしい天気のように、すっきりと晴れた気持ちです。
改めて協力してくださった方々に感謝を申し上げます。

今シーズンは内容的にも厳しいレースでした。
でもその中で山本尚貴、ジェンソン・バトン両選手がタイトルを獲ったわけですから、日本のSUPER GTがいかに素晴らしものであるかということを世界中のモータースポーツファンに知ってもらういい機会にもなったと思います。
今日のふたりは本当によく頑張ったと思います。
内容も素晴らしかったですね。ひやひやしながら見てはいましたが、やり遂げるだろうと、ふたりを信じていました。

僕にとって、NSXでのチャンピオンは、(自身が参戦した1995年の)ル・マン24時間でのクラス優勝でした。
それ以来、監督としてGTレースに関わってきましたが、優勝はあってもチャンピオンはなかったので、久々のチャンピオンの気分を味わっています。これまで応援してくださり、本当にありがとうございました。




山本尚貴選手
 前半のスティントでは、なんとか8号車に喰らいついていくという思いで走っていたし、願わくば前に出ようとプッシュしていたのですが…。ちょっと8号車のペースが速くて、それに加え、8号車が思ったよりも早い周でピットに入ったのには驚きました。

できれば僕らも早めにピットインしたほうが結果的には38号車よりも前に出られたと思うので、もうちょっと早くピットに戻りたかったですね。
でも、今回は(タイトル争いをしている)1号車を見ながらレースをしなければならなかったし、向こうはタイヤ無交換で行くかもしれないということを意識する必要もありました。彼らを見てレースをしないといけなかったため、ピットにもなかなか入れませんでした。

JB(ジェンソン・バトン)も後半つらかったと思います。
でもその中でがんばって堪えてくれました。1号車が迫ってきたときは、もうテレビを見てられなかったですね。それほど苦しい状況でした。
ただ、僕だけじゃなく、スタッフみんなも緊張してつらい週末だったと思う中で、みんな完璧に仕事をしてくれたからこそ、この結果を得ることができたと思います。
チームに、そして国さんに、そしてレイブリックに、また、応援してくださった皆さんにもいいプレゼントができました。本当に感謝しています。

チャンピオンは一年の積み重ねの結果だと思うので、今年は積み重ねがしっかりできた一年でした。
チームの誰もが完璧なシーズンを過ごすことができたからこそ、この結果を得ることができたと思っています。とても感謝しています。


Jenson Button選手
 本当にすばらしい一年になりました。何度も言ってますが、僕にとって初年度のSUPER GTのチャレンジは、本当にたくさん勉強することがありました。
特に今回の最終戦では、激しく競り合う戦いになったし、最後の最後まで大変な展開でしたよね!?
最終ラップまでこんな内容のレースになるなんて、ほんとスゴすぎると思いました。

僕自身は”新参ドライバー”としてチャレンジの年だったわけですが、その中でナオキ(山本尚貴)のようなチームメイトにめぐり逢うことができたのは、本当にラッキーだったと思います。
僕には彼のようなドライバーが必要でしたから。色んなところで彼の速さやパフォーマンスに助けてもらえたと思っています。
本当にチャンピオンを獲ることができてうれしいし、そのチャンスをくれたHondaにも感謝しています。もちろん、そしてチーム総監督である”国さん”にも!

レース終盤には、1号車からプッシュされることになったのですが、僕らにとっての一番問題にしていたのは、ピットインのタイミングでした。
向こうはタイヤ交換後にものすごい追い上げを見せたので、大変タフな状況でした。でも最後にこうやってチャンピオンを獲れて、本当にハッピーです!




小島一浩監督
 今回、決勝では前を走る8号車の動きより、チームとしては1号車に対してどう戦うか、が重要でした。
後方にいる1号車が、僕らの動きに合わせてくる可能性もあったし、またタイヤ無交換の戦略を採るのではないかという憶測もできたので、とにかく1号車の動きを意識していました。
ピットインのタイミングを引っ張って様子を伺ったのですが、向こうが仮にタイヤ無交換をやるのであれば、僕らは10秒以上のマージンが必要でした。そうしないと逆転されてしまうので…。まずそれだけのマージンを作るには、ミニマムの周回数でピットインはできませんでした。
また、セーフティカーが入ることも危惧していたので、あまり引っ張り過ぎるのも心配でした。なんとか10秒近くになるまでいけたのでピットインしたのですが、奇しくも1号車と同時ピットインになりました。

アウトラップでは、ジェンソン・バトン選手が頑張ってくれて、さらにマージンを取ることができました。それが良かったです。
前を追いつつ、また後ろからも迫られるという状況での走りでしたが、結果的にチャンピオンを獲ることができました。
ここまで長い間頑張ってこれたのは、チームをずっと応援してくださっているスポンサーの方々、そしてファンのみなさんのおかげです。やっと恩返しができました。本当にありがとうございました。


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